フライパンは、消耗品ではないと思う。私たちのものづくりは、その一言から始まりました。
いつからでしょうか。フライパンを「いずれ捨てるもの」として買うようになったのは。
買ったばかりの頃は、卵がつるりと滑る。けれど一年もすれば、少しずつこびりつくようになって、二年目には買い替えを考えはじめる。誰もがその繰り返しを、当たり前のこととして受け入れています。
私たちは、その「当たり前」を疑うところから始めました。
原因は、表面の膜でした。
調べていくと、答えは単純でした。フライパンがこびりつくようになるのは、使い方のせいではありません。こびりつきにくさの正体である表面のコーティングが、少しずつ削れていくからです。塗られた膜は、熱とヘラと洗剤で、必ず摩耗します。膜で滑らせる方式である限り、どれほど丁寧に使っても、終わりは来ます。
ならば、膜を強くする競争に加わるのではなく。
膜のいらないフライパンは、つくれないか。
たどり着いたのは、純チタンでした。
膜に頼らないなら、金属そのものがこびりつきにくい形をしているしかない。そう考えて素材を探し、たどり着いたのが純チタンです。軽く、錆びず、医療の現場でも使われるほど安定した金属。その表面に、無数のハンマー加工を刻みました。
くぼみに油がまわり、食材は点で触れる。こびりつきにくさを、塗膜ではなく“金属の形”そのものでつくる。形は、剥がれようがありません。だから何年使っても、買った日の状態のままです。
こびりつきにくさは、表面に刻んだ“形”から生まれる。
少しだけ、手を貸してください。
正直にお伝えしたいことがあります。この道具は、フッ素加工のような“何もしなくてもツルツル”ではありません。油を薄くなじませて、しっかり予熱する。使う人に、少しだけ手を貸してもらう道具です。
そのかわり、使うほどに油がなじみ、手になじみ、調子が上がっていく。2.5mm厚の三層構造は、強火を受け止め、熱を底全体にまわします。金属ヘラも、食洗機も、遠慮はいりません。道具に気をつかう毎日から、道具に頼る毎日へ。私たちが作りたかったのは、そういう関係です。
十年後の、あなたの台所に。
想像しているのは、派手な景色ではありません。何年か先の朝、いつものように火にかけられて、いつものように卵を滑らせている。買い替えの心配も、膜の心配も、とっくに忘れられている。台所の道具が、ひとつ“悩みの種”から“相棒”に変わっている。それだけで、この道具を作った意味があると思っています。
フライパンを選ぶ日々を終えて、
料理を楽しむ日々へ。
NAGI ものづくりチーム